「寒いから最初だけ設定温度を上げよう」は無意味

エアコンの設定温度とは、エアコンが達成すべき数値目標、つまり、「室温がこれぐらいになるまでがんばれ」という目標値みたいなもの。営業マンで言うところのノルマみたいなものかな。とすると、暖房を入れるとき、「寒いから最初27度くらいにして、後から22度に下げよう」みたいなことをするのは、営業マンで言うと「今月は1000万売ってもらいたいから、月初ノルマを2000万に設定して、800万くらい売ったところでノルマを1000万に修正しよう」みたいな、そういう感じのことをしていることになる。

営業マンは人間なので、最初に大きな目標を設定すれば、努力によって能率が上がって、結果的に売上1000万が達成できるかもしれない。でも残念ながら機械はそうはいかない。いくら発破をかけようが、機械の能力は一定であり、設計値以上にも以下にもなりようがない(なったらそれは故障です)。逆に、目標が低ければ人間は手を抜くけど、機械は常に目標に向かって全力で働く。

エアコンとて、然り。

エアコンていうのは、ものすごく単純に言うと、時間あたり一定の熱量を、暖房時は室外から室内へ(或いは、冷房時には室内から室外へ)輸送する機械であって、その「一定量」の大小によって、例えば6畳用、8畳用、12畳用として売られている(部屋が大きいほど外部への放熱が大きくなるので、熱輸送能力が大きくないと部屋の温度を保てない)。んでもって、これまたものすごく単純に言うと、「設定温度20度の暖房運転」てのは、「部屋が20度になるまで全力で外部から室内へ熱輸送して、20度になったら一旦熱輸送を止め、そんでまた部屋が少し冷えたら20度になるまで全力で熱輸送を行う」ということをやっている。ここで重要なのは、設定温度が何度であれ、エアコンはその室温を目指して常に全力でがんばる、という部分。つまり、設定温度は「何度になったら熱輸送を止めるか」ということでしかないので、例えば最終的に室温を20度にしたいのであれば、「寒いから最初だけ設定温度を上げ」ても、最初から20度に設定しても、結果として部屋が暖まるスピードは変わらないことになる。

ただし、注意したいのが、エアコンが「室温」として見ているのは、往々にしてエアコン室内機本体の温度センサが示す温度、ということ。部屋の空気をうまく循環させれば、部屋の温度分布が均一化され、部屋全体が設定温度に達し、快適に過ごせると思う。風量を上げたり、サーキュレータと併用したりするといいのかなー。